ご主人様に首ったけ!
「……霧は知っているの?」

「はい。
昨日、お伝えしました……」

「そう……」


何かを考えるような零さんとの無言の空気がすごく胸に突き刺さる。


怒られる?

理由もなく辞めたいなんて、納得できないよね……。


でも、そんな私の心配をよそに、零さんは霧様のように優しく微笑んだ。


「露ちゃんが決めた事なら、僕はなにも言わないし聞かないよ」

「零さん……」

「それに、今の露ちゃんすごくつらそうな顔をしているよ。
なにか大きな事情があるんだよね?」

「は、い」


さすが零さん……。
そこまで分かってくださったのですね。


「もし、気が変わるようならいつでも戻っておいで」

「……っ」


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