ご主人様に首ったけ!
涙を拭って、零さんに笑みを向ける。

泣いたままお別れはしたくなかったから……。


「またね、露ちゃん」

「はい……」


“またね”――……。

“さよなら”じゃなくて、そう言ってくれたのは、零さんの優しさ……。


そんな零さんに一礼をすると、静かに部屋を出た。


霧様、零さん……。

もう、会えないかもしれない。

笑い合えないかもしれない。


でも、いつか――。

いつか、また前みたいに笑い合えることを信じて、露はこの家を出て行きます……。


長い間、お世話になりました……。


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