ご主人様に首ったけ!
「あれー?露、早いねー」

「あ、おはよう、牧……」


自分の机に向かってボーっとしたまま座っていると、牧が教室に入ってきた。


「ね、あたしさっき東條先輩見たよ?
今日は一緒じゃなかったの?」

「あ、うん……」


どうしよう……。

いずれ分かってしまう事とはいえ、みんなにどうやって話そう。


「なんかすごい元気なかったけど、何かあったのかなぁ?」

「……」


霧様……。


できることなら、今すぐ霧様に会いたい。

会って、ぎゅって抱きしめてほしい……。


霧様を傷つけている事が分かっているのに、なにも出来ない無力な自分がもどかしい。


午前中の授業も、ずっとこんな事を思っていた。


ため息ばかりついて、頭に浮かぶのは霧様のことだけ。

忘れなきゃ、って思えば思うほど霧様の顔が浮かんできて、私に笑いかけてくれる。


涙がにじむのを必死で堪えながら、全く耳に入ってこない授業を聞いていた。



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