ご主人様に首ったけ!
「や……っ!」


俺は勢いよく露に突き飛ばされ、俺たちの間には小さな距離が出来た。


「あ……ごめんなさいっ、びっくりして……」


気まずい雰囲気が流れて、取り繕うように露は謝ってきたけれど、俺は、


「帰ろうか……」


そう一言だけ言って、ベンチから立ち上がった。


やっぱり……。

露は、俺を好きなわけじゃないんだ。


なのに、なんで露は俺と付き合ってるんだよ?

好きだなんて言ったんだよ?

意味わかんねぇっ。


苛立ちと、混乱で頭の中がぐちゃぐちゃになった俺は露を置いて足早に歩き続ける。

――こんなわけのわかんない女なんか置いて先に帰っちまおうかと思った。


でも、後ろに露の気配を感じると、どうしてもそんな事は出来なくて、自然と歩く速度が落ちていった。


ったく!

俺も甘いよなぁ!

仮にも彼氏といるっつーのに、他のやつを思っているヤツに情けをかけるなんて!


ほれた弱みってやつかぁ?


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