ご主人様に首ったけ!
それからは偶然なのか、故意になのか……。


露とは登下校でも、学校内でもすれ違う事や姿を見ることもなく、露と出会う前となんら変わりのない生活へと戻っていった。


ただ、僕の心をひどく締め付けたのは、心にもない軽々しい噂話。

周囲に興味を持たない僕の耳にも届いた、露があの彼と付き合うようになったというもの……。


きっと、それは本当のことだろう。

でも、謂われないことを周りの連中が言っているのを耳にすると居たたまれなくなる。

その噂の中心にいる露のことが心配だったから。


しかし時が経つにつれ次第にそんな噂も薄れ、学校は夏休みに入った。


夏休み入ってすぐの日曜日。

天気がすごくよかったから、図書館へ行って勉強でもしようと思い家を出たとき――。


「……露!?」

「……霧様!」


別れてから今までずっと家でも、学校でも会うことはなかったのに……。


「久しぶり……」

「はい……」


久々に見る露の姿に心がざわつくのが自分でも分かる。


でも、露に近づこうと足を進めたとき、露が一人ではない事に気付いた。


一度会った事のある彼――。

露の、今の彼――……。



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