ご主人様に首ったけ!
話には聞いていた。

でも、実際に2人の姿を目にすると……。


「デート?」

「……はい」


露は僕の質問に短い返事で答えていたけれど、僕とも彼とも目を合わそうとはしなかった。


「そう、引き止めて悪かったね。
じゃあね、露……」


今の彼の前で、一度別れた男と話しているのはきっと露も辛いだろう。

そう思い、小さく手を振ると僕は露たちの前から立ち去った。


後ろからでは分からないように、そっと胸に手を当てる。


……鼓動が早い。

たった数分、露と逢っただけでこんなにもどきどきする……。


もともと図書館へ行くつもりで家を出たけど、こんな気持ちのままでは勉強なんてはかどるわけがない。


ならば……。


「おや、霧くん。
お一人ですか?」

「ええ」


なにかあるとつい足が向かうようになった『strawberry milk』。

やはり今日も、自然とここに足が向いていた。


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