ご主人様に首ったけ!
彼が帰った後、受話器を手に取り早速彼から聞いた電話番号をプッシュした。


数回コールした後、彼は電話に出た。

はじめは訝しんでいたが、話があると伝えると渋々といった様子ではあったけれど、こちらの要求をのんでくれた。


本当は、すぐにでも彼と話をしたかったけれど、急な事でさすがに今日は無理だと断られてしまったため、翌日の昼に会うことにした。

電話をしたとき、微かに彼の声は動揺していたように感じていた。


そのことからも、おそらく僕の考えている事は十中八九間違ってはいないと思う。

ただ、彼が素直に白状するか、だ。


そして、約束の昼――。

学校の近くにある公園で彼を待っていると、待ちあわせの時間より5分ほど遅れて彼がやってきた。


川崎聖の双子の兄、川崎神が――。


「遅くなってすみません。
でも、東條先輩からお呼び出しがかかるなんて、びっくりしましたよ」

「……」

「で、話ってなんですか?」


彼は笑顔を向けて問いかけてきたけれど、その目は冷たく笑ってなどいなかった。



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