ご主人様に首ったけ！
考え込むように、下を向いていた聖ちゃんが顔祖上げてまっすぐに私を見据えてくる。

その目は怒りとか悲しみとかではなくて、ただひたすらに傷ついている、そんな目だった。


「聖ちゃん、ごめんなさい……っ、私……」


そんな聖ちゃんの目に見つめられているのが辛くて、何度も謝罪のの言葉を口にする。


弁解はしない。

脅されていたとはいえ、聖ちゃんの言っていることは嘘じゃないから……。


しばらく無言のにらみ合いが続く。

すると、なぜか不意に聖ちゃんの表情が和らいだ。


「……露は優しいよな」

「え？」


優しい？

なんで？


私は聖ちゃんを騙していた事になるんだよ？

それなのに……。


聖ちゃんの言わんとすることが分からなくて眉を顰めていると、聖ちゃんはさらに続けた。


「好きな人を守るために、自分を犠牲に出来るんだもんな」

「……」

「……でも。
好きなヤツに、自分のことを好きでもないのに付き合ってって言われたやつは？」

「……！
聖――っ」


重い重い聖ちゃんの一言。


確かにそうだ。

自分のことを好きでもないのに、付き合ってって自分の好きな人に言われたら……。

私だって、淋しいし、悲しいし……心が折れてしまう。


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