ご主人様に首ったけ!
「あ……霧様、どうぞ上がってください」

「うん、失礼するよ」


蒸し暑い外でずっと霧様を待たせるわけにはいかない。

急いで部屋へと通し、圭ちゃんに頼んで冷たい飲み物を持ってきてもらった。


「ありがとう、露」

「いえ……」


霧様の前にグラスを差し出し、自分の分も並べてテーブルに置いた。


どうしよう……。

霧様と2人きりの時間なんて久しぶりな上に、家に招くのも初めてだからすごく緊張する。

妙な緊張感が走り、室内は冷房が寒いくらいに効いているのに汗が流れてくる。


事情の知っている霧様が私に会いに来たってことは、それを咎められるか、あきれられて突き放されるか、それとも……?


「……さっき、突然彼が来てね……」

「え……?」


私が何も話せずに、黙ったまま俯いていると不意に霧様が口を開かれた。


「露のところに行けって。
露はきっと僕に何も言い出せなくて悩んでいるだろうから、って」

「!!」


聖ちゃん……。

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