ご主人様に首ったけ!
「だめです、霧様っ!
それじゃあメイドの意味がないって何度言わせるんですか!?」

「あ、珍しく強気だね」


いっつも霧様は使用人らしい仕事をさせてくれないんですから、たまには私だって強気でいきます!!


「ご主人様にメイドの荷物を持たせるわけにはいけません!!」

「……っ」


しっかりとカバンをつかみ、霧様からそれを取り返そうとする。

でも、さすがに男の人の力には敵わなくてどう頑張っても奪い取る事はできない。


ただ、荷物を持つ手を離そうとはされなかったけど、霧様の顔は明かに拗ねているようで……。

そんな霧様がすごくかわいく思えて、思わず微笑んでしまう。


「……そんな生意気なメイドにはお仕置きだよ」

「!?」


霧様の“お仕置き“という言葉に反応した時にはすでに遅くて、不意打ちを狙われてちゅっと唇にキスをされた。


「き、霧様……!?」


その拍子に鞄は完全に霧様の元に……。

ふ、不意打ちなんてずるいですっ!!


「こういうものは、主人・メイドに関係なく男に頼ればいいんだよ」

「でも……」

「ほら、行くよ」


霧様は荷物の持っていない方の手で私の手を取り、スタスタと部屋を出て行ってしまわれた。



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