ご主人様に首ったけ!
その動作に、私は思わず声を出してしまう。

カップを戻されたってことは、美味しくなかったのかな?


やっぱり私みたいな素人が入れた紅茶なんか、霧様の口に合う訳ないよね……。


「ごめんなさい、霧様。
次はもっと練習して美味しいものを……」


そう言ってカップを下げようとすると、伸ばしたその手を掴まれ、私は驚いて霧様の顔を見た。


「霧様!?」

「露、頑張ったね。とても美味しかったよ」


私の手を掴んだまま霧様に微笑まれて、自分の頬が赤くなるのを感じた。


「ほ、本当ですか!?」

「うん。今まで飲んだ中で一番かな」

「……っ」


それは言いすぎじゃ……?とも思ったけれど、霧様に褒められてしまっては何もいえず、破顔してしまう。


「また入れてね」


最上級の笑顔で微笑まれ、私は断るすべを知らず、ただただその言葉に頷いた。


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