ご主人様に首ったけ!
当たってほしくない予感が見事に的中してしまい、私は自分でも明かに顔が曇っていくのがわかった。

元々見込みのない恋だってことは分かっているけど、実際に彼女がいるって分かるとショックだなぁ


そして、霧様には悟られないよう、目線を若干ずらしながら……、


「そう、なんですか……。
お気をつけて行ってらっしゃいませ、霧様」


と、小さく呟くように言うのが精一杯だった。


「あっ、私お仕度お手伝いしますねっ」


それ以上の沈黙には耐えられなくて、無理に明るく務めて霧様の側へと近づいた。


でも……。


「露?
何を言っているの?」

「え……?」


何って?

霧様こそ何を言ってらっしゃるの?


霧様はこれからデートにお出かけ。

すごく辛いけど、すごく苦しいけど、これは仕方のないこと……。

そう思わないといけないんだもん。
だからせめて、メイドである私がお手伝いをしようと思ってお声をかけたのに……。


あ……。

もしかして、手伝われるのも嫌ってこと……?
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