ご主人様に首ったけ!
そんなことを思っていると、私たちに気付いた店員さんが声を掛けてきた。


「いらっしゃいませ……、あ、霧くんじゃないですか」

「こんにちは」


カウンター越しに話しかけてきたのは、長身でめがねのよく似合う若い男の人で、とてもかっこいい。

肩まで伸びる髪は、後ろで一つにくくられていた。


「お久しぶりです、蓮さん」

「まったくですね。
最後に店に来てくれたのは留学へ行く直前だから1年以上前になるのかな?」

「そうですね。久しぶりに蓮さんのいちごみるくが飲みたくて」

「そうですか。
……そちらの方は?」

「……!」


霧様の後ろで隠れるようにしているところをお店の人に気付かれてしまい、別に悪い事をしているわけではないのに、肩が一瞬すくみ上がってしまった。



< 93 / 374 >

この作品をシェア

pagetop