貴方の恋人になりたいです
意地悪な彼
誕生日から一週間がたった。
いまだに彼にはプレゼントのお礼を言えてない。
でも、なんて言おう……。
鏡に自分を写し、背中の半分まで伸びた黒髪をくしで梳いていると、首筋に消えかかっている痣が目にはいった。
そっとその部分に触れてみる。
すると、あの日のことがフラッシュバックして蘇ってきた。
柔らかい唇と、香水やコロンとはまた違う甘い香り。
肌に触れるくすぐったい髪や、力強い腕。
カァッと血が顔に上り、鏡に写った自分は耳まで真っ赤になっていた。
「はぁ…ほんとなんてお礼言おう……」
「なんのお礼?」
唐突に後ろから声がし、驚いて振り返ると、そこには親友の阿部 摩美がいた。
「あれ、声……」
「ちゃんとかけたわよ。なのに返事がないから心配したんだけど、必要なかったかしら」
摩実はクスクスと笑った。
「待ってて、今お茶持ってくるから」
席をたち、台所にお茶とお茶請けをもらいに行った。