KAGAMI
想太くんと見つめ合っても、その目にアタシは映っていなかった。
何処を見ようとしているのか、何を見たいのか分からなかった。
でも今は、アタシを見てくれているのが分かる。
アタシだけを見つめて、愛してると言ってくれた。
だけどね、違うの。
アタシじゃないの…。
「違う、お母さんに…」
想太くんはアタシに触れる手を止めた。
「何言って…」
きっと一度も、言ってないんでしょう?
アタシがタイミングを奪ってしまったから…。
だってアタシさえ居なかったら、想太くんはお母さんと愛し合う事が出来ていたはず。
アタシさえ居なかったら、お母さんは死ぬ事なんかなかったのに。
追い詰めて、狂わせて、死に追い込む程苦しい思いをさせた張本人。
貴方はそんなアタシを、憎む事もせずに愛してると言うの?
本当はいちばんに言いたかった相手は、別に居るでしょう?
「良いから…言って?」