KAGAMI


なのに、答えたいと思った。
この人に答えてあげたい、と思った。


「それってどういう意味?」

先輩は、いたって真剣。
真剣にアタシも映す目は、可愛くて優しい垂れ目じゃない。

欲しいっていう本能を剥き出しにした、目。


「おれのものになってくれんの?」


「あ…」


でも答えられない。
何も言えなかった。

上手い言葉は見つからなかった。


傷つけない方法なんて、知らないくせに。



人を見下せる程、アタシは出来た人間じゃない。


馬鹿にしてたここに集まる生徒達は、自分に従順に従ってるだけだ
と気付いた。

アタシは、従うべき自分をも隠してる…。

ここに“赤澤莉麻”は存在しない。




ごめんなさい…


< 237 / 276 >

この作品をシェア

pagetop