KAGAMI


学校の生徒で、この事を知ってる人は居ない。
いちいち話さないから。

名字の違う保護者が居る事を知ってるのは、先生達くらいだろう。


「なんか逆にごめん!言いたくない事だったよな…」


どうしてこの人は、自分の事を置き去りにして他人を守れるんだろう。
どうしてこの人は、歪む事もなく優しい人なんだろう。


「いえ、アタシの方こそ…」


そこで、短い昼休みが終わりを告げるチャイムが空に響いた。


「あ、終わった。」

何気なく言った先輩のこの言葉に、特に意味は含まれてなかったけど。
何故かふと見た先輩は、哀しそうな顔をしてた気がしたんだ…


「アタシ、で良かったら…お弁当作ります!!」

なんでこんな事を言ったんだろう?
飽き性のくせに。
気分屋のくせに。

毎日学校に来る事も出来てなかったアタシの、不確かな約束。


「まじで?!頼むわ!」


でも先輩は喜んでくれた。
きっと、アタシの言葉に信用が無いのは知ってる上での了解。


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