KAGAMI


幼く笑う顔には不釣り合いな、男らしくて低い声。


声がした方に目を向けると、窓の外だった。
そこで先輩が楽しそうに走っている。

グラウンドに居る同じ服を着た人達はたくさん居るのに、すぐに先輩を見つけた。


先輩もこっちを見てるようだった。
そしてまたイタズラっぽく笑って、手を挙げた。
その手をぶんぶんと大きく振る。

アタシも教室の中から、笑って小さく手を振った。


先輩は嬉しそうにさらに動きを大きくして、手を振った。

その後ろから近づく、体育の先生。
それは、どうやらアタシも同じだったみたい。

外では手を縦にして、中では教科書を縦にして
手を振ってる生徒の頭を叩く。


「痛ったぁ…」

アタシと先輩の口が同じに動く。


アタシは後から叩かれた先生の顔を見上げた。
「痛いです。」

「当たり前だ、叩いたんだから。」

と先生は怒った口調なのに、からかうような顔をして言った。

「外に居る子供は無視しろよー。お前が今見るのは教科書だ!」

「は~い」

とアタシはつまらない返事をした。


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