KAGAMI


いつもと同じようにコーヒーを淹れた。
想太くんがアタシ好みのミルクと砂糖の分量を知ってる様に、アタシも想太くん好みの分量は把握してる。

それをトレイに並べて部屋に行く事にした。


想太くんが好きなのは、アタシだよね?
片平さんに好きなんて、言ってないよね?

直接聞けばいいのに、そう出来そうにもない。
頭の中で繰り返して、自分が望む答えを想太くんが言ってくれる想像をするだけで精いっぱい。

こんなんで、大丈夫かな?



コンコンと2回。
想太くんの部屋のドアを叩く。

「ほいほーい」

中から想太くんの呑気な声を確認して部屋に入った。


「おかえり」

想太くんは原稿用紙とにらめっこしながら声だけこちらに投げかけた。


「ただいま」

すんすん、と鼻が動いて想太くんが声に遅れて振り向く。


「お、ちょうど飲みたかったんだ~」

といつもの笑顔でアタシに言う想太くん。
それを見たら、今までの事なんてどうでもよくなってしまいそうな程に、アタシの心は落ち着いた。

アタシは想太くんの椅子の隣に無理矢理置いた、自分の椅子に座った。
その前に想太くんは机の上をちょいちょいと片付けたから、その上にトレイを置いた。



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