KAGAMI





別に関係ないのに、僕は彼女を見るのが日課になっていた。




仕事が終わって下に降りる頃には、もう彼女はここに戻ってこない。




彼女が座っていたベンチを寂しく見つめながら、僕は帰路につく。






何日、何ヵ月、そう過ごしたのだろう。



もう3年前になるクリスマスイブの日。




いつものように定時で上がって会社を出ると、彼女がいた。


下を向いて座っていた。




恋人達で溢れる街に、1人で座る彼女と1人で彼女を見つめる僕。





ふと、彼女が僕を見上げた時





耳障りな愉快な音楽と笑い声の騒音は、一気にボリュームを下げ自分の呼吸だけが聞こえた。





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