KAGAMI
彼女がそう言った後、雪が降ってきた。
世界の全てが、彼女の為に動いていたのかもしれない。
「お腹とか、空いてない?」
僕のこの言葉も…
「いえ、それ程でもないです。」
僕は名前も知らない女の人と、何を話しているんだろう?
「あ、寒いんだよね?どこかに入ろうか」
僕はとことん彼女にとって好都合な男だろう。
クリスマスイブの栄えた明るい街。
目の前に見えるホテルのレストランも、駅近のファミレスさえ空席はないだろう。
今日は道が混むと分かっていたから電車で通勤したから、そんなに近くもない家に呼ぶのもどうだろう…
すると彼女は僕が考えていた事を読んだかのように、小さな唇を震えさせながら言った。
「あの、もし迷惑じゃないなら…」
僕は情けない男だろう…
何をしているんだ