KAGAMI
ざわざわ…
人がひそめく声と、救急車の音。
タンカのローラーの耳触りなゴロゴロ。
赤いランプが瞑ってる目にすら目障りで、アタシは意識を取り戻した。
目を開けたら、雲が支配した黒い空が見えた。
横を向くと同じアパートに住むおばさん達が、アタシを見て何か言っている。
しばらくしてようやく、自分がタンカで運ばれてると気付いた。
ドラマなんかでありそうな光景。
自分がこんな風になるわけがない。
あぁ、これはきっと夢なんだ…
早く、早く冷めて…
あんなお母さんの姿なんて忘れさせて…
ピーポーピーポーという音を聞いた後、アタシはまた意識を手放した。
疲れた。
しばらく寝ていなかったし、ゆっくり寝よう。
隣の、お母さんの温かさが無い事すら気付かずに