激愛パラドックス
時計の針が8時を回ったころ、ようやく練習が終わった。
「いつもこんな時間まで練習なんですか?」
「まぁな。受験生には結構厳しい」
そっか、翔って受験生だったんだ…。
じゃあ、忙しくてデートとか出来ないよね…?
トボトボと歩く私の隣で翔は思い出した様に呟いた。
「スパイク新しいのに買い換えようかな」
「もう履けないんですか?」
「あぁ、結構ボロボロ。大会前に慣らせておきたいんだよ」
「そうなんですか…」
「今度の土曜買いに行こうかな」
「良いの見つかると良いですね」
夜空に浮かぶ三日月を見つめながら相づちを打つ。
「そうじゃねーよ。お前も一緒に行くんだよ」
へ?
「わっ、私も一緒に行って良いんですか?」
三日月から目を逸らして翔を見上げる。
「良いから言ってんだけど」
目尻を下げて笑う翔に、本日2度目の胸キュン。
わーい!!
学校以外で翔に会えるんだ!
「何時にします?」
「あっ、急にテンション上がった」
「そんなことないですよっ!」
「フフン。じゃあ10時に迎えに行く」