激愛パラドックス
「…あっ、チーッス」
俺たちに気づいた雅也が、ユキを無視して俺に挨拶してきた。
「お前もスパイク見に来たのか?」
「大会前に買って慣らしたいんで」
「雅也のスパイクも、私が選んであげようか?」
ニヤニヤするユキに、雅也はウンザリした顔を見せる。
「おい、やめとけ。雅也とスパイク被ったら、恥ずかしいだろ」
「えー!?オソロ可愛いんですよ?」
…それは、女同士の話だろ…。
「あっそ。でもそれを男に求めんのはよせ」
気色悪い…。
「…そうですね。想像したら翔が気持ち悪く感じました」
勝手に想像しといて勝手にに気持ち悪くなんなよ!
「…なんか変」
俺たちのやりとりを見ていた雅也が、ソッポを向いて呟く。
「なにが?」
「ユキが」
「…私?」
思い当たる節がないユキは、首を傾ける。
「名前、呼び捨てのクセに敬語使ってる」
「……あっ、」
固まってしまったユキに何も言わず、雅也は俺に会釈をして店の中に入っていってしまった。