激愛パラドックス
…あの野郎、気まずい雰囲気作って逃げやがったな!?
店の中に消えてしまった雅也を睨み付けてユキに視線を戻す。
「翔、気づいてました?」
「……まぁ」
「いっ、言い訳じゃないんですけど、私、緊張しちゃうんです。すっ、好きな人といるから!だから、呼び捨てで呼ぶのが精一杯というか…タメ口とか、ハードル高いんです」
ぶっちゃけると、雅也が羨ましく感じたりした。
同じ学年だったら、もっと校内で会う機会も多いだろうし、話も合う。
3年の俺なんて、これから受験生だし今までより会う回数なんて格段と減ると思う。
…だけど、今のユキの言葉を聞いて、すんげぇ安心した。
直接的にユキから“好き”と言われるだけで、こんなにも胸がいっぱいになって満たされる。
「…良いよ、そのままで。タメ口でも、敬語でも、ユキの中で何かが変わる訳じゃないんだし」
気長に待つよと言うと、余裕が出来たら挑戦しますと意気込んでいた。
それからユキとファーストフードで昼を済ませて、駅前をぶらついた。