激愛パラドックス


しばらく探してもらっていると、前方から「あった!」という声が聞こえて顔をあげる。



「本当ですか?」


「あぁ、アンタの近くにあった。手出して」


素直に手を出すと、指先にピタっと柔らかいソレがくっつく。


「わっ、本当だ!ありがとうございます!」


片方が見つかって、心が少し軽くなり、自然と頬が緩む。


「あっ、もう片方もあったぞ」


えっ!?ど、どこ?


見えもしないのに、キョロキョロ見回していると、突然手首を掴まれてしまう。


「…キャッ」


驚いて声を上げると、掴まれた手首が緩むのを感じた。


わっ、なに?ビックリした…。


「動くなよ。袖口に付いてるんだから………はい、良かったな」


コンタクトを指に乗せて、離れる手。


「…あっ、ありがとうございました」


なんだかボーっとしていた私は、慌ててお礼を告げる。


「あいよ」


軽い返事をした男の人が、視界から消えているのを確認してから私も立ち上がって進もうとするが……。



バタン!


「…タタタタッ」


前が見えないから、案の定転んでしまう。




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