激愛パラドックス
ある日の土曜日、好と朝から遊んでいた私は、バイトがあるからと好と別れた後、一人でオレンジ色に輝く川沿いを家に向かって歩いていた。すると、サッカーボールがコロコロと足元に転がってきた。
「…すいませーん!蹴ってください…って!ユキ姉じゃん!!!」
「あっ、俊(シュン)!!こんな所で一人で練習?」
ボールを蹴って、俊にパスをする。
「サンキュー。そう、自主練だよ。今度試合に出られるかもしれないんだ!」
俊は、私の大切な弟。
小学5年生。
好きな子が、サッカーが好きという不純な動機で急遽、今年からサッカー部に入った。
元々モテる弟は、サッカー部に入ってから更にモテる様になったみたい。
中学に入ったら、ジャ○ーズにでも入れたいな。
そんな私のひそかな野望も知らず、俊はシュート練習をしていた。
「ねぇ、ど真ん中ばっかりに蹴ってもダメなんじゃない?」
「え…?」
「ゴールにはキーパーがいるんだからさ、そんなとこ狙ったって止められるよ?」