激愛パラドックス
「大丈夫かよ?」
まだ近くにいたのか、また声をかけられてしまう。
「大丈夫です、すみません」
本当に恥ずかしい……。
パタパタとスカートに付いた砂ぼこりを払って、壁をつたいながら歩く。
見つかったはいいものの、どうやって着けよう。
このまま着けたら絶対に痛いよね?
かといって、ずっとこの場にいるのも嫌だし…。
壁をつたって歩く私をずっと見ていたのか、
「コンタクトを着けねーの?」
と聞かれてしまった。
「いや、あの。洗浄液がなくて…」
「ないとダメなわけ?」
「ゴミが付いると痛くて入らないんで」
いや、このさい水道水でも良いかなぁと考えていると、
「あっ!ちょっと待っとけ」
と命令口調で言うと、何処かに行ってしまった。
…どうしたんだろう。
5分も経たないうちに、バタバタと足音が近づいてきて、「はい、これ」と言って、私の手になにかを握らせた。