激愛パラドックス
俊の前まで来ると、センパイが私にしたのと同じように頭に手を置く。
……もしかして、私って弟と一緒!?
「俊、上手くなったか?」
「もちろん!…もしかしてコーチ、ユキ姉が好きなんですか?」
キャーーッッ!!!
なんてこと聞くのよ!
バカ弟(泣)!!
まるで私がセンパイのこと好きみたいじゃない!
いや、好きなんだけど!
なんて一人ツッコミをしていると、センパイが私に背を向けて立って腰を屈めた。
「何でそんな事聞く?」
「もし好きなら、ちゃんと伝えないとダメだと思ったんです!ユキ姉、凄いモテるから!」
「しゅっ、俊!変なこと言わないでよ」
私の叫ぶような声に、センパイは振り返ってフッと笑うと、俊に何か耳打ちをした。
…何を言ったの!?
「じゃあ俺は行くからな。ジョギングの途中なんだよ」
「…あっ、今日はありがとうございました!」
ボーっとしていた俊が、離れていくセンパイに頭を深々と下げてお礼を言った。
「頑張れよ、サッカー少年」
「…センパイ、俊に何を言ったんですか?」