激愛パラドックス
「そうなんだけどさ。俺の知らないところでなんだか良い雰囲気になってるみたいだし?」
……ギクッ。
なんで知ってんだ?
チラリと雅也の方を見ると、直ぐに視線を逸らされた。
「……雅也、まさか…」
「この前の日曜日に、ユキと翔先輩が一緒にいるとこ目撃しました」
…………やっぱり。
「ということで、翔を無理させないっていう方向に決定したんだよ」
「…あっそ」
まぁ、篤史の言う通りだし、ここは大人しく引くか……。
ボールを蹴りあげて足の甲を使ってリフティングをしていると、篤史が隣で呑気に拍手をする。
「絶好調だねっ、翔。この調子でユキちゃんのハートもGET出来るとイイな」
篤史の言葉に動揺して、ボールがつま先に当たり、変な方向に飛んでいく。
「…そんなんで動揺してたら、敵を欺くこと出来ませんよ?」
スパイクの紐を直しながら、雅也が冷静にツッコむ。
「サッカーに例えんな!」
ついムキになって言い返すと、雅也は鼻でフッと笑う。
ムカつく野郎だな!