激愛パラドックス
練習が終わって皆が次々と帰宅していく中で、気が付いたら部室に俺と雅也だけが残った。
「ユキに…告んないんすか?」
バタンとロッカーの扉を閉めた雅也がコッチを向く。
「…なんだよ、急に」
長椅子に座って、触っていた携帯を閉じる。
「いや、別に。どうすんのかと思ったんで…」
俺の隣に少し距離を空けて椅子に座る。
「…うーん、どうだろな。アイツってダレにでも優しく接してんじゃん?だから、俺と話したりしてて笑ってるのも、他のヤツらと同じなんかと思うと、よくわかんねぇ…」
悩んでいる俺に雅也は「独占欲強いですね」と言って目尻を下げる。
「…からかうなら帰るぞ。お前待ちなんだよ」
今週は俺が部室の鍵当番だったりする。
「すんません。誰かのせいで疲れてんすよ」
「そんなんでヘバってどうすんだよ。篤史になんかさっさと帰ったぞ」
鼻唄なんか歌いながら…。
「篤史先輩は今日、合コンだそうですよ」
あっそ。
「年中発情期なだけはあるな」
もう、逆に尊敬しそうなほどに。
「嫌っすね。キャプテンが年中発情期って」