激愛パラドックス
あれから1ヵ月が経ったけれど、入学式の日以来、あの人に再会することはなかった。
といっても、名前も知らなければ顔もわからないから仕方がないんだけど……。
ハァと溜め息をつくと、後ろから中学の友達の好(コノミ)が声をかけてきた。
「なに溜め息なんかついて!」
「なんでもない。それより次の時間数学だっけ?」
話を逸らすようにどうでもいい話題を出す。
「そうだよ!根岸怖いから寝れない〜」
好が一人で嘆いていると、背後から隣のクラスのこれまた同じ中学で仲の良かった雅也が顔を出す。
「ユキ、頼みがあるんだけど」
「イヤッ」
「キャハハッ、ユキ即答!ウケるっ」
何がウケるのかわからないけど、好はお腹を抱えながら笑っている。
その姿を冷めた目で見ていた雅也が、私に視線を戻す。
「最後まで聞こうよ。今度の練習試合に、マネージャーとして参加してほしい」
「えぇ!?なんで私?」
「てかさぁ、サッカー部ってマネージャーいるじゃん?なんか、眼鏡かけた地味なコ」
好が隣から口を挟む。
「…あれは、仕方なくだよ」
仕方なく?どういう意味?