激愛パラドックス
その前の廊下を、ユキが誰かと並んで歩くのが見えた。
「わおっ!ユキちゃん男と歩いてんじゃん」
「…どうせクラスのヤツだろ」
と言いつつも、視界はユキを捉えている。
日誌を抱えるようにして持ち、楽しそうに話しをして笑っているだけなのに、何故か胸がムカムカする。
「アハハッ……あっ!!羽柴センパイ!」
俺に気づいたユキが、片手を挙げて手を振っている。
「……あぁ」
自分でもビックリするほどの冷めた声にユキはというと、一瞬固まっていたように見えた。
「ユキちゃん、日直だったの?」
気まずい空気が流れる中、篤史の声でユキの表情が少しだけ穏やかになる。
「あっ、はい。日誌を届けに来ました!センパイ達は今から練習ですか?」
「うん!そうだよ♪気を付けて帰ってね〜」
ヒラヒラと手を振る篤史に、ユキが手を振り返えしながら、チラリと俺を見る。
それにスッと顔を背けた俺は篤史を置いて職員室に入っていった。