激愛パラドックス
「……ん」
キスの合間に漏れるユキの声に我に返る。
……なにしてんだよ!
体を離すと、ユキは赤く染まった頬を隠すように手で顔を覆っていた。
ユキを、どうしたいんだ?俺は……。
キスなんか、するつもりなかったのに………。
「…センパイ?」
潤んだ瞳で見上げてくるユキに、胸がドクンと跳ねる。
…この目のせいだ!
「もうそろそろ、戻ろうか」
「…あの、センパイに伝えたい事が……」
立ち上がろうとする俺を、ユキはユニフォームの裾を摘まんで阻止する。
「なに?」
「…えっと、私…前から、センパイのことが……」
…!?
「悪いっ」
「…えっ?」
ユキが何を言いたいか分かってしまった。
「俺は嫌いだから…」
自分のことが嫌いなのに、どうして他人は俺を好きになるんだろう。
「……………」
チラッとユキを見ると、目に涙を溜めて地面を見ていた。
ズキン、ズキン、ズキン………。
人を泣かせたことなんて、何回もあるのに、こんなに辛いのは初めてだ。