激愛パラドックス
「どうなってるんですか」
「なんでもねーよ。落ち着くまで一緒に居てやってくれ」
雅也の肩をポンと叩いてグラウンドに向かう。
後ろを振り返ると、雅也がタオルをユキの顔に押し当てていた。
アイツがいるなら安心かもな……。
「おいっ!翔のドS、何があったか教えなさい!」
試合が終わってバスに乗り込むと、篤史が隣に座ってきた。
「…疲れてんだよ、寝かせろ」
「前半戦しか出てないくせに」
「…格下相手に2-1ってなんなんだよ」
「…良いじゃん!勝ったんだからっ」
ムキになる篤史を無視して目を閉じる。
「逃げやがった…そうやってユキちゃんからも逃げるんだね、翔は」
なんとでもいえ。
「雅也に取られちゃっても良いんだ?」
…その方が良い。
「雅也がユキちゃんとキスしても良いんだ?セックスしても良い……フグッ!」
煩い篤史の口を、タオルを突っ込ませて黙らせる。
「お前に俺の気持ちがわかるか、バーカ」
誰もわかる訳がない。
むしろ、わかって欲しくもない。