激愛パラドックス
「…オエッ!奥に突っ込みすぎだ!おかげでクッキー吐くところだったよ」
タオルを口から出した篤史が喉を押さえて愚痴る。
は?クッキー?
「そんなもん、いつ食ったんだよ?」
「…さっき。ユキちゃん、誰かさんに渡しそびれたらしいからもらっちゃった!」
……ムカつく。
「好きなくせに、なにを我慢してんのかね?君は」
「何キャラだよ」
「篤史くんキャラだよ」
「嘘つけ!」
「嘘つきに嘘つき呼ばわりされたくないね〜!」
ツーンと窓の外に目をやる篤史に殺意が込み上げる。
「翔は昔から恋愛系が苦手だよね。というか、嫌いじゃん?なんかあったの?」
「…ねーよ」
「もしかして、沙織(サオリ)ちゃんの事でトラウマになってるとか?」
…沙織。
昔付き合ってた女の名前なんか良く覚えてたな。
「ちげぇよ。つーか、いつの話だって。そんなのとっくの昔に忘れてたっつーの」
篤史は、不満そうにまた窓に顔を向けた。
…はぁ、あながち間違ってはいないかも。