激愛パラドックス

「…オエッ!奥に突っ込みすぎだ!おかげでクッキー吐くところだったよ」



タオルを口から出した篤史が喉を押さえて愚痴る。



は?クッキー?


「そんなもん、いつ食ったんだよ?」


「…さっき。ユキちゃん、誰かさんに渡しそびれたらしいからもらっちゃった!」


……ムカつく。


「好きなくせに、なにを我慢してんのかね?君は」


「何キャラだよ」


「篤史くんキャラだよ」

「嘘つけ!」


「嘘つきに嘘つき呼ばわりされたくないね〜!」

ツーンと窓の外に目をやる篤史に殺意が込み上げる。


「翔は昔から恋愛系が苦手だよね。というか、嫌いじゃん?なんかあったの?」


「…ねーよ」


「もしかして、沙織(サオリ)ちゃんの事でトラウマになってるとか?」


…沙織。


昔付き合ってた女の名前なんか良く覚えてたな。

「ちげぇよ。つーか、いつの話だって。そんなのとっくの昔に忘れてたっつーの」


篤史は、不満そうにまた窓に顔を向けた。


…はぁ、あながち間違ってはいないかも。




< 88 / 118 >

この作品をシェア

pagetop