激愛パラドックス
練習試合から1週間が経ち、俺とユキとは不思議なほどに顔を合わせることはなくなっていた。
拒否られてんな……。
いつもグラウンドの横の道を通るはずなのに、最近は全く見かけなくなっていた。
「おつかれっす」
「…おう、おつかれ」
練習を終えて部室の中に人が疎らになった頃に、雅也が入ってきた。
「…翔センパイ、ユキとどうなってんですか?」
「…は?」
「アイツ、辛そうに毎日笑ってますよ」
いつもの様に冷静に、表情一つ変えずに淡々と話す雅也に、胸がチクリと痛んだ。
「どうもしねーよ」
俺の心の中で、なにかがザワザワと騒ぎだす。
「そうっすか」
「…雅也はどうすんだよ?」
やっぱり、コイツ………ユキを好きなんじゃ?
「なに言ってんですか。俺は翔センパイを心配して…」
「心配?違うだろ。お前は自分の気持ち隠してるだけだ。そんなの優しさとは言わねぇよ」
バンッとロッカーを閉めると、部内がシーンと静まり返った。