激愛パラドックス
「なになに〜?喧嘩かなぁ?」
タイミング良く篤史が部室に入ってきて、俺と雅也は顔を逸らした。
なにやってんだ、俺は……。
雅也は唇を噛み締めて、部室から出ていく。
何人傷つかせれば気がすむんだよ……。
「雅也は大丈夫だよ」
ロッカーに頭を押し当てて、後悔していると篤史の明るい声に少し落ち着いた。
「…明日、謝っとくわ」
「うん」
「昨日は悪かった」
次の日、俺はちゃんと雅也に謝った。
一晩寝ずに反省をしたのに対し、雅也は何とでもないというような顔で笑っていた。
「…雅也、俺に構うなよ?」
俺はどうせ、誰も信用なんか出来ないんだから。
「してませんよ。俺は、サッカーの方が大事ですから」
「…そうか」
否定している雅也にこれ以上追及しても昨日の二の舞になるだろうから、この件は閉まっておこう。
それから練習を初めてしばらく経った時、頭がズキンと痛み、まるでスローモーションのように地面に倒れ込んでしまった。