激愛パラドックス
あぁ、俺もう3年なのに…こんな時期に倒れてる場合じゃないんだよ……。
無意識に手を伸ばすと、誰かに手を握られた。
………もしかして、
それと同時に目を覚ますと、篤史が死にそうな顔で俺の手を握っているのが分かった。
お前かよっ!!
振りほどく気力もなく、ただ篤史を眺めていると、「お目覚めですか、王子様」と言われた。
「…だからお前…キモいって…」
掠れた声が、静かな病室に響く事もなく消えていく。
「翔、最近寝ないで勉強してただろ?一応倒れた時に頭打ってたからCT撮ってもらったけど異常は無かったってよ」
「そうか…」
両手で俺の手をポンポンと叩くと、篤史は「良かった良かった」と言いながらナースコールを押した。
「さっき目開けた時、手を握ってるのは誰だと思った?」
うんざりする質問に、自然と溜め息をついた。
もう、わかってんだよ。俺だって……。
誰に一番会いたくて、側にいて欲しいのかを……。