激愛パラドックス
ジロリと篤史を睨み付けると、口笛を吹きながらカバンを手に取った。
「はいはい、邪魔者は消えますよ!じゃっ、ユキちゃんバイバーイ!」
颯爽と病室から出ていく篤史に、俺とユキは静かに笑った。
「この前はゴメン」
ユキを椅子に座らせると、練習試合の時のことを直ぐに謝った。
「…平気です」
泣きそうな顔をして笑うユキに、俺まで泣きそうになる。
「嘘つけ、無理して笑うなよ」
頭をポンと撫でると、溜まっていた涙が、ストンと落ちた。
「…うぅ、センパイが…優しい……」
そう言って泣くユキに少しだけホッとして微笑む。
「辛い思いさせてごめんな?」
俺の言葉に、何度も顔を横に振るユキ。
「…俺さぁ、小さい時に親が離婚して……」
今まで、誰にも言ったことがない話をユキに話すことに決めた。
ユキは、涙を拭いて俺を見上げる。
「…その理由が、母親の不倫だったりするわけ。小学校に上がった頃に親父にそう教えられて信じてなかった俺は、確かめるために母親の住む町に一人で行ったんだ」