激愛パラドックス
「そんで、母親のいるアパートの前まで行ったわけよ。そしたら、母親は赤ん坊を抱いてて新しい男と幸せそうに暮らしてた。俺が出ていく隙もないぐらい、ムカつくぐらい幸せそうで……家に帰って部屋を見れば、洗われてない食器、溢れそうなほどに溜まったごみ箱。山積みの洗濯物に、親父酒の瓶が部屋のあちこちに転がってて……なんで俺はこんなに大変なのに、母親は幸せで、正直恨んだ…今も…」
ギュッと手に力を入れると、ユキがそっと両手で包んでくれた。
「親父も、「女なんか皆一緒だ。絶対に信用するな」が口癖で、1度も信用なんかしたことがなかった」
だから、誰も好きにならないと決めた。
だけど、キミを好きになった。
誰にも愛されたいと思わなくなった。
だけど、キミには愛されたいと願った。
女なんて、みんな一緒だと思った。
だけど、キミだけは違うと信じたくなった。
ユキと出会ってから、ずっと矛盾と戦ってきた気がする。
悲しそうな顔を見せるユキに、胸の奥がズキズキ痛む。