戀愛物語
ざくり、と草を踏む音が耳朶にはり付いた。
そこで今自分がいる場所がまだ公園内の、林の中だったんだと気がつく。
けれどそんなこと、必要な情報じゃない。

追い払わなければ。この、男を。
無我夢中で訳の分からないことを叫びまくるが、足音はどんどん近くなる。

「嬉しい……君がこんなに僕のために叫んでるなんて“初めて”だ」

「!!」

そっと頬に冷たい肌の感触がする。
恐怖で振り払う事も出来ずに、みことは顔を持ち上げられた。
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