あなたが来てくれて嬉しい
「――…本人はそう言ってる」
「…そうかぁ。…どんな気持ちで居るんじゃろうな、まるは」
どこか遠い目をするふーにゃん。
「オレお前に一つ、お願いせんといけんわ」
そう言って、ふーにゃんはポケットからケータイを取り出した。
何が何だか分からないおれの前で、ふーにゃんはデンワをかけ始めた。
「……おぅ、ユミ、オレじゃ」
ふーにゃんの彼女かな?
「うん…うん、そんな話じゃなくてな。オレもうお前と会えんから、…すまん」
電話口の女の声のボリュームが一気に上がって、喚いてるのが分かった。
ふーにゃんは何も答えず、デンワを切る。
「………」
呆然とするおれに、ふーにゃんが言う。
「まるに会いたい」
「なっ、何も彼女と別れなくてもっ」
「友達の延長みたいなもんじゃった、かまわん」
急に怖くなった。
30秒で彼女と別れてみせたふーにゃん。
自分の中でのケジメ?
それともやっぱりまなが好きだから?
ふーにゃんの前に居ると、物語の主人公から自分が脇役へと追いやられる感覚に陥る。
この強さは何でも手にいれてしまうのではないか…