椿
朝にふった雨のせいで、水溜まりができていた。
その水溜まりが、今日の冷え込みで薄く凍っている。


なあ…真一…覚えてる?
あの日も、あちこちの水溜まりが凍るくらいに寒い日やったよね。

あの日、真一はあほみたいにその氷の上を滑ってたっけ…

私、あほみたいにずっと見つめてた。


2時間しても帰らへん真一を見て、私と同じ目してるなって思ってん。

家に帰りたくないんかな?
こんな所で時間潰すしかないんかな?って…


私がそうやったから…勝手に仲間やと思っててん。

あの時、まだ中学生やったよな…
私ら中学生で知らなくていい、一生経験せんでもいい、痛みを知ってた。


私は、少し前を歩く司を見上げる。
握った手に力をいれた。




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