それぞれに、さよならを。
4月
―…4月。
何となく入った大学の今日は4日目。
(…これっていつまで、こうなの)
構内にたどり着く前のざわざわと騒がしい並木道。
無数のサークル勧誘。
(…くだらない、)
ため息をついて、その人混みへと足を一歩踏み入れた。
明るい声が飛び交うそこは、眩暈がしそうな程人で溢れていた。
俯いたまま、足速に構内へと続く入口を目指す。
無数の勧誘から一度も声をかけられずに入った構内。
声をかけられない、なんて、そんなの当たり前だ。
一つに縛った真っ黒の髪。
黒縁の眼鏡にかかる程の前髪。
お洒落気の微塵も感じさせない、黒いパーカーに、デニム。
一言で言えば、
"ださい"
そんな私に声など掛かるはずも、無い。