それぞれに、さよならを。


「…ここに、知り合いなんて、居ません」



そう、呟く。



(…あれ、何かこれじゃ、ただの友達居ないヤツじゃないか。…確かに、居ないんだけど…)



そんな事を考えてる私をよそに目の前の人は私を見つめて一言。



「…ふーん。とりあえず座れば?立たれてるの、うざい」


(…うざいって、)



(本当、なんだろ…この人…)



心が折れそうだ。



言い返したいけど、やっぱり恐くて何も言わずにおとなしく反対側のソファーに腰を下ろした。



「…だっせー眼鏡」



ボソリ、呟いたその言葉も無視。



ゆっくりと移した視線は、窓の外。



(…あれ…?)



光が射す目線の先に広がるのは、見覚えのある景色だった。



「……、」



―…ガラガラッ



目の前のお弁当を食べ始めたその人に疑問を投げ掛けようとしたけど、声とは違う音に遮られて、終わった。


「おせーよ、漣。」



目の前の人が"漣"と呼ぶのは、昨日の、あの人。
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