それぞれに、さよならを。


「そんな、怒んないでよ」



扉を閉めた漣と呼ばれるその人は、私ににこりと笑みを零してソファーに座った。



流れるように座るその人は昨日のように、断りもせず、まさかの私の隣に、だ。



「…あの、座るなら、あっち行ってくれません?」



開いたソファーは二つもある。



いくら大きなソファーでも、わざわざ隣に座る意味が分からない。



「いいじゃん、隣座りたい」



そう言って笑う、その人はやっぱり猫みたいだ。



茶色がかった大きな瞳は、私を捕らえたまま口を開く。



「…ここに居るって事は昨日の返事は良い答えって事かな」



(…あぁ、そう言えば)



サークルに入るとか何とか言ってたな、と今更思い出す。



「サークルには入りません」


ため息を漏らして、返す言葉は勿論、"NO"だ。



「えー、何で。入ってくれないと帰してあげないよ」



さらり、そう犯罪めいた言葉を零す。



(…それって脅迫って言うの、知ってますか?)



さすが、変質者だ。
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