それぞれに、さよならを。

「サークルとか、入るつもりも無ければ興味も無いです。なので…」



"お邪魔しました"



そう、言おうと思った。



私の声を邪魔したのは猫の様なその人の、癖のある声。


「俺はねー美月ちゃんに入って欲しいし、美月ちゃんに興味あるよ?」



「……、」



「…まぁ、サークルの事はとりあえず置いといて、とりあえず自己紹介しよっか。」


そう言ってにこりと笑ったその人は「瑤、あれ」と目の前で焼きそばパンにかじりついていた恐い人に(…瑤って言うのか。どうでもいいけど、)目配せをした。



「…ん。」



焼きそばパンを口にくわえたまま半分に折られた白い紙に、ボールペンを取り出し、不審者に渡す。



(自己紹介とか…)



「はい、じゃあここに名前とー…」



私の前に置かれた紙と、手渡されたボールペン。



私はそれにひとつ、ため息を漏らした。
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