それぞれに、さよならを。
目の前にはメロンパンをガサガサと袋から取り出す恐い人。
(あれ、この人何食分、食べる気なの)
隣には何が面白いのかにこにこと笑う変質者。
(…あぁ、なんなのこの人達…)
「…別に紙に書かなくても自己紹介なんて、」
ボールペンを軽く握ったままそう呟けば、目の前から怠そうな、低い声が飛ぶ。
「いいから名前くらい早く書け。おっせぇんだよ」
「…これ、書いたら帰りますからね」
メロンパンを半分以上食べ終えた恐い人は至極面倒臭そうにため息を吐いた。
(…こんな人達とサークル活動なんて、地獄以外の何物でもないよ)
(これ書いたらさっさと帰ろ。この人達と関わるのなんて、これで最後だ)
頭の中で悪態を付きながら乱雑にペンを走らせる。
"藤岡 美月"
白いそこに書き殴るように綴った名前。
「…これでいいですか。」
"自己紹介"にしては簡単なそれに、ペンを置いた。