それぞれに、さよならを。


もうこの際、馬鹿って言われた事も鼻で笑われた事も冷静に受け流そう。それよりも、



「それ、有りなんですか」



辞めてもいいなら、この場だけでも入るって言っちゃえばいいよね?



「有りも何も辞めたい奴、無理矢理置いとく様な鬼じゃねぇよ」



そう言って足を組みながらため息を吐いた。



(…あれ、おかしいな。今まさに無理矢理入られようとしてるんだけど)



(これは無理矢理に入らないのかな、あはは、そっかー)



なんて、一人自問自答を繰り返す。



「…キモ」



「…言われなくても、知ってます。」



現実に引き戻すその冷めた声の持ち主を睨みつける。



「…で、どうすんの」



"さっさとしろよ、めんどくせぇ"って顔のその人が腕を組んでソファーに背中を預けた。



(…王様か何かですか、あなたは)



むかつく程偉そうなその人に心の中で悪態をつく。



「…辞めてもいいならとりあえず入ります」



早くこの場からも消えたいので、



そう付け加えて、王様の様なその人にへらりと作り笑いを返した。
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